ペーパーダイバー

ダイビングの練習をしたことがありました。
一応初級ライセンスは取得したのですが、取得後は継続的に練習に行かなかったし、ダイビングツアーにも行かなかったので、取得して約1年半後に与論に行った時は、ペーパーダイバーの扱いでした。

他の初心者の女性一人との女性二人でヒメユリ隊と名付けられ、サポートのダイバーが一人付いているグループに分けられました。

なぜライセンスを取りたいと思ったかと申しますと、印象の良い知人がダイビングに時々行くしお魚が可愛いと言ったのと、海女さん達の素潜りを見る度に私もあんなに潜れたらいいなぁと思うけれど、泳ぎが得意では無いので酸素ボンベは必要だし、上達したらイルカと一緒に泳げるかも知れない、と思った、等々です。

他には、海の中の状況に関する報道で、プシューップシューッという音といっしょに解説しながら海の中を進んで行く人を観て、ライセンスを取ればああいう仕事も出来るかも知れない、なんて、また掛け離れた事を思ったのでした。

それで初級練習は日本海側の海流が穏やかな浅瀬の浜から歩いて入って行って潜ったのですが、重たいボンベを背負って寄せては引く波に抗いながら浜に立くのが、大変でした。
海の中は日本海ですから、お魚屋さんの生け簀にいるようなサバとか、ああいうグレーな彩色の魚の群れが泳いでいました。

全体に沈んだ水色で海底には磯巾着や海鼠も居たような気がしますが、岩に沢山の薄紫色のヒトデが付いていたのを覚えています。
一回行っただけの与論のヒメユリ隊の時は岸からの出発から戻りまでが僅か2時間だったと思います。

沖まで船で出て背中から海に入って潜ると本当に水が透明だし、カラフルで可愛いお魚の群れが行き交っていて、竜宮城にいるのかと思うほど綺麗なお伽の世界でした。
それが最初で最後の教習以外でのダイビングでした。

実践していないマイブームたち

多くの人間は、その時々によってマイブームというものがあり、何かしたいな、と思ったらしばらく頭の中がそればっかりになるものだ。
たとえそれが、やりたいな、という思いだけで実行に移らなかったとしても。
私は、そんなやりたいなと思って実際やっていない過去のマイブームというものが豊富だ。

ダイビングもその一つ。
そのきっかけは一冊の海洋図鑑だ。
世界中のダイビングスポットをピックアップしていたその図鑑には、オーストラリアかどこだかにある、地面をぽっかり穿ったようなまん丸の海が載っていた。
ちょうど湖のようなきれいな円形だった。
そこは水深がとても深く、写真で見た限りでもその海の水の色は真っ青を通り越して黒かった。
たくさんサメもいるらしく、気の弱いダイバーにはおすすめしない。
そんなことがかいてあった。
それを読んで、私はすっかりダイビングというものに心を奪われた。
怖い思いはしたくないし、気は弱いし、泳げもしないのだけど、何故だかそこに行ってみたくて仕方なかった。
海中に入っているダイバーの姿を捉えた写真は、まるで洞窟のなかを探検しているかのようだった。
その景色はとても美しく、せっかく地球に生まれたのだから是非行きたい、と思うようになった。
それからというもの、ダイビング教室についてと、ダイビングスーツについて、そしてダイビングの免許についてを年がら年中調べていた。
その結果、スーツはピンキリだが10万位すること、ダイビングの免許にはランクがあって、ほとんど初心者のDランクは2日ほどの講義でとれること、なんかの簡単な知識を得た。
近場のダイビングスクールの位置も調べた。
そして。
私はやる前からすっかり満足してしまったのである。
何にも進んでいないのに、やりきったような感覚に陥った。
これは、学校のテスト前に完璧なノートをつくって、それで勉強したような気分になってしまうという、あれと同じである。
それから私のやらないマイブームはいろいろなところを転々としている。
今はバイクの免許である。
何事においても、いつかはやらなければ。
そう思っている。
成せばなる、成さねばならぬ、の格言が、常に耳に痛いのである。

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